オオカミさんの限界・1






真っ暗な家の中に連れ込んだ途端、俺は電気もつけずに藤原を玄関の壁へと押しつけた。
ふらりとよろめきながらも、藤原は抗議の声もあげずにただ俺の顔を見上げる。
僅かな明かりのみで浮かび上がるその表情は今まで見たこともない色香が漂って、俺の腰と言うか股間にモロ直撃してくる。
今夜こそは!って気合いは入れてたものの、いざこんな表情の藤原を目の前にしたらただこうやって見ることしかできねぇ。

あー、ほんっと俺ってば藤原が好きなんだよな。

「、啓介……さ―――――」
「ん、あ、あぁ…………悪ィ」

考え込んでたら、焦れたらしい藤原の小さく呼ぶ声が聞こえてはっと意識を戻す。
そうだった、とりあえずはまず俺の部屋に連れ込まなきゃいけねぇんだ。
まだ店で盛り上がっているヤツらがこっちへ来るまでの間に、藤原とイたさなきゃなんねーし。

「靴、脱げるか?」

先に靴を脱いだ俺が手を握ると、藤原はコクっと頷きよろよろしつつも靴を脱いであがる。ほんとならスリッパを出してやんなきゃなんだろうけど、今はとにかく一分一秒でも早く部屋へ連れて行きたい。
手を握ったまま階段へと向かおうとする俺の手がぐいっと引っ張られる。
振り向くと藤原が手は握ったまま俯いていた。

「何、どうした?」
「………………」
「藤原?」
「………れ、で――――」
「えっ、」
「おれ、で…いいんすか――――?」



……………………何を今更。


藤原だから、あんなに猛アタックして落としたんだろうが!



「藤原、じゃなきゃダメなんだよ」
「っ――――――」
「行くぜ」

俺の言葉に声を詰まらせた藤原の手をぐっと引っ張ると今度は階段へと誘った。藤原が落ちないように一段一段、ゆっくり上ると俺の部屋のドアを開けた。

「…………っ……」

し、しまった!!
部屋、すっげ汚いし!!起きたら片付けようと思ってたのにすっかり忘れちまった……
と、とりあえずベッドまでの道だけでも確保しねーと!!

「藤原、ちぃーっとだけここで待ってて?」
「……………え?」

酔ってて頭が回ってないらしい藤原を壁に寄りかからせ、俺は部屋に飛び込むと猛ダッシュで片付けだす。とは言っても散らかった雑誌を蹴って端に寄せ、脱いだままの服を纏めて部屋の隅に放り投げるだけ。
でも何とかベッドまでの道を作り終えると再びドアの向こうを覗き込む。

「藤原、お待たせ…………」

藤原は壁に寄りかかり俯いていたが俺の言葉にふらりと顔を上げ頷いた。そんな藤原の手を取り、部屋の中に連れていく。何か言われるかと思ったけど、薄暗いし藤原も酔ってんからそんなにはっきりは見えないのか、黙ったままベッドに腰を下ろす。
そんな藤原の隣に座り下から覗き込むと、視線に気がついたのかちらと見るとすぐ俯いた。

「…………藤原、」

女に囁けばあっという間に落ちる、とっておきの甘い声で名前を呼ぶとぴくんと肩が震える。ヤベー、そこらの女よりも可愛い反応するし!
そっと肩に手をやって引き寄せれば、されるがままに藤原が俺に体重を預けてくる。
その、今夜はやたらに素直な藤原をゆっくりとベッドに押し倒すと、少し緊張するのか小さく息を飲むのが聞こえた。

ほんとならこっから先は一気に進めてしまいてぇけど、いきなりそれはハードだよな。とりあえずは二人で気持ち良くなる方向に持っていくか。
俺らの付き合いはまだ始まったばかりだ、焦ってもしょうがねぇ。

俺は短い時間で頭の中でまとめると、潤んだ目で見上げてくる藤原の柔らかい唇を啄み始めた。

「………んっ、」

これくらいのキスなら何度もやっているせいか藤原は素直に受け入れる。角度を変えつつ、俺はそっと舌を差し込んで藤原の舌を絡め取った。
今までよりさらに深くなったキスに、藤原の体がぴくっと跳ねる。イヤだと突っぱねるかと思ったけれど嫌がるどころか応えるように、舌をゆるりと絡めてきた。

「っ……………」

熱い舌が何度も絡みついて、俺はその度に藤原の髪をくしゃっと掻き回してしまう。
藤原がこんなに熱烈なキス返してくるのは初めてだけど、こんな濃厚なのもできるんだな。
その濃厚なキスの相手が前に聞いた事のある、例のあの女かもと思うだけで、何かムカムカしてくる。……俺も人の事は言えねぇけどさ。
その自分勝手なムカムカをキスにこめてやると、藤原は苦しくなってきたのか何度か顔を背けようとする。それを逃さず、今までで一番濃厚な口づけをしてやると藤原の手が俺のシャツをぐっと握りしめた。

「ん、はぁ…………」

キスから解放した途端甘く掠れた吐息を無意識に零す藤原に、俺は労るように頬から首筋へと唇を滑らせ始めた。

服に染みついた煙草の匂い、藤原の汗ばんだ肌から漂う匂いを感じつつ俺はシャツをめくるとそのまま固くなっている胸の飾りへと唇を寄せた。

「、ぁっ」

酒が入って敏感になっているのか、藤原の体が魚のように跳ねイヤイヤと頭を振る。
そんな可愛い拒否ははなっから無視するけどな。
構わず舌先で転がしつつ反対側を指先でも刺激してやると、唇を噛みしめているのかくぐもった声を漏らしてシーツを握りしめる手が視界に入る。
ちらっと見れば、赤く染まった頬と浮かび上がる艶っぽい表情がますます俺の股間を直撃してくる。

………藤原、すげぇ色っぽいンだけど。

ちょっとどころか、かなり急かすようにしてあっという間に服を全部剥いてしまうと、藤原が恥ずかしそうに体を横向きにして海老のように丸まってしまった。
そんな藤原を見下ろしつつ、シャツを脱ぎ捨てると俺は藤原の顎を摘んでこちらに向けさせた。

「なぁ……見てよ。俺が脱ぐトコ、」

ぼんやりしていた目がぱちっ、と音をたてて見開くのをそのままに、俺はちょっとしたストリップショーさながら膝立ちの体勢で片手でゆっくりとボタンを外しファスナーを下ろし始めた、
ぴったりしたボクサータイプの下着の下から窮屈そうにペニスが盛り上がっちまってるの、藤原には見えるんだろうか。
更に下まで下ろし前をくつろげると、顎を摘んでいる手越しにはぁ……と熱い息が漏れたのを感じた。
顔を見れば僅かに視線をそらせつつも呼吸が荒くなっているのがわかる。


俺はそのまま脱ぎ取ると床に放り投げ、藤原の隣に横向きで寝転がった。








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