海 へ 行 こ う !
「ン、ァ………あ………っ…」
グシャリ、と背中のビニールシートが音を立てる。足を高く抱え上げられて、俺は頭を振りながら必死に啓介さんの首に手をまわす。
「拓海…………ッ…」
「ァ、だめ…………そこ――――っ…」
いくら誰もいないとは言え、やっぱり自分の喘ぐ声なんか聞かれたくない。そう必死に考えながら何度も手を口元にやろうとすると、啓介さんの手が邪魔をしてくる。その度に俺は睨みつけるけれど、啓介さんの唇が宥めるように重なってくるともう何もわからなくなる。
そして啓介さんのペニスが俺の中に挿ってくると、俺はさらに訳がわからなくなって、もう場所も忘れてただ快感に溺れてしまっていた。
「拓海………も、ヤバイ………っ?」
穿ちながら啓介さんが俺のペニスをぬるりと触ってくる。その感覚に俺のペニスはヒクついて限界を訴えてきた。
「ッ、あ、あっ…………はぁっ……」
「俺も、も………限界ッ――――――」
そう唸ったと思った瞬間、啓介さんが腰を引いて奥へと思いきり突き上げる。
その一突きと啓介さんの指が施した愛撫に、俺も声を上げて達してしまった。
気がつけば日は少し傾きだしていたが、俺のところは啓介さんがビーチパラソルを動かしてくれてたのか、きちんと影になっていていた。ぼーっとしながら体を起こして海へと視線を向けると、まるで魚のように泳いでいる啓介さんの姿が見える。
腹にかかっていたタオルを取り、そのまま見つめていると啓介さんは気がついたのか、手を振って海から上がってきた。雫がしたたる髪をかきあげながら歩いてくる啓介さんはやっぱりカッコよくて、その鍛えられた体と自分の体を比べて少し落ち込んでしまう。
「平気か?拓海――――」
俺が渡したタオルを受け取り、笑いながら体を拭く啓介さんに俺はふいっと視線を逸らす。そんな俺の様子に啓介さんは何も言わず、クーラーボックスからスポーツドリンクのペットボトルを取り出して渡してくれた。
「ほら」
「すみません―――――」
「喉渇いただろ………結構、」
――――声上げてたもんな。
そう続けた啓介さんの顔を殴ると「ってーっ!!ちょっとは加減しろよ!」と叫ばれたけど俺は知らん顔してスポーツドリンクを一気にあおった。
「ったく………可愛くねぇなぁ…………」
そう呟いた啓介さんの言葉にピクっと反応してしまった。確かに女の子みたいに可愛くもねぇし、体だって柔らかいわけじゃねぇ。ゴツゴツしたこんな男の体を抱いて、それでホントに気持ちいいのかよ。というか、俺なんかと付き合う事自体が間違いなんじゃないのか?
膝を抱えながらじっと砂を見つめている俺に、今度は啓介さんはぐっと近寄って俺の頭を抱きこんできた。
「………なーに、暗くなってんのかなぁ?拓海は」
「…………うるさいです」
「…………俺はさ、拓海がいいの。素直じゃねーし、可愛げもねーけどさ。そんな拓海が」
一番好きだ、てぇの。
だからあんなに欲情しちゃってめちゃくちゃ抱いちまうし。今だってほら。
そこまで言った啓介さんは俺の手を取り、自分の濡れた海パンに押しつけるとそこはさっき熱を放ったばかりだというのに再びゆるく勃ちあがりだしていた。
「なっ、何をまた…………っ…」
「んなの拓海だからに決まってんだろ?―――――拓海が好きだから、拓海にしか欲情しねぇ」
そう言いながらも啓介さんの目は真剣に俺を見つめている。その深く吸い込まれそうな色に俺は目を閉じて体を預けた。
そんな顔されて、そんな言葉言われたらこうするしかないじゃないか。
「―――――俺、何にも出来ませんからね?」
顔を上げずにそう呟くと、啓介さんはくすくす笑いながらぎゅっと抱きしめてきた。
「あぁ、いいぜ。――――今日、誕生日だから。一緒にいてくれるだけで俺、幸せだし」
「はっ?!………っ、何でそれを早く言わないんすかっ!!」
思いがけない言葉に顔をバッとあげると、啓介さんが目を細めて笑いながら俺を見つめていた。
「別にいいんだって。今も言ったけど俺にはお前と一緒にいられればそれで………」
「………っ、今日の晩飯は焼肉がいいですっ!」
啓介さんの言葉を遮り、そっぽを向いたまま怒鳴った俺に啓介さんは始めにきょとんとして、それから言いたい事がわかったのかくすくす笑い出した。
「オッケー。じゃあさ、戻ってシャワー浴びて……国道沿いに焼肉屋があったからそこ行こうぜ?」
おごってくれる?と笑いながら顔を近づけた啓介さんをちらりと見て小さく頷いた俺に、啓介さんは嬉しそうに笑ってまた俺を抱きしめた。
抱きしめられながら見た海と空は、どこまでもどこまでも真っ青で、何だか俺も幸せな気分になった。
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