SHOOTING STAR




今日は遠征の中休みという事で珍しく高橋家で豪勢な宴会が催されていた。


普段は滅多に遅くまで残らない拓海も、この日だけは前々から啓介に「ぜってぇ帰るなよ!泊まってけ!!」とキツク言われていたので、文太には2日分の配達の交換を条件に高橋家に泊まる予定で来ていたのだった。


泊まるとなれば自然、宴会も無礼講。しかも涼介達の両親は病院勤めでめったに家に帰ってくる事も無かったので、いくらどんちゃん騒ぎしても平気だった。
そして気づけば時間は深夜をまわり、綺麗だったフローリングにはあちこちと男達が酔いつぶれて高鼾をかき転がっていた。
まだ未成年ともあってウーロン茶で参加していた拓海は、あっと言う間につぶれてしまったメンバーに苦笑しつつ散らかったテーブルを片付けだす。


すると横からすっ……と綺麗な指が伸びてきて、拓海の持っていた皿をそっと奪い取った。

「涼介さん………」
「いいよ、そのままにしといてもらえれば。明日皆にやらせるから」
「いや……でも………少しでも片づけておけば楽かな、と思って………」

涼介の柔らかい笑みに拓海はドキドキしながらも皿を重ねていく。
涼介もかなり飲んでいるからだろう、いつもよりも雰囲気が柔らかくそして何故か甘い。

「そうか………藤原はきちんとしているんだな」
「そ、そんな事、ない………すよ……」

普段はクールな漆黒の瞳が、今は溶けそうなくらいに熱のこもった眼差しで見つめている。


あぁダメだ、ドキドキする。


そんな事を思っている拓海の頬に涼介の手が触れようとした途端、拓海の腰が何者かにぐいっと引っ張られた。

「なっ………け、啓介さんっ」
「んだよー………触んじゃねぇよ、アニキィ………拓海は俺のモノなのっ!」


SHOOTING STAR1


酒臭さをぷんぷんさせながら拓海の体をガシッと掴み、啓介は毛を逆立てた猫のようにフーッと涼介を威嚇する。涼介はその様子に少々ムッとしながらもポリポリと頬を掻き、ソファに座る。

「ったく………寝てるかと思ってたんだがな」
「ふんっ、甘いなアニキ。拓海の身に何かあればアンテナがビビッと働くようになってんの」
「アンテナって……お前は妖怪か」
「俺のアンテナは拓海専用でーす」

なー、拓海ー、と一転してニコニコと笑みを向け、啓介はちゅっちゅっと拓海の頬にくちづける。
拓海が真っ赤になりながら「やっ、やめてくださいよっ!」とぐいぐいと押し返しているのを見て、 涼介は呆れたようにため息をついてソファに横になり目を閉じた。

「……………他の連中に見られたら目の毒だ、さっさと部屋に行っちまえ」
「言われなくたってそのつもりだぜ。拓海ぃ、部屋まで連れてってー」

ぎゅっと抱きついたまま拓海に甘える啓介に拓海ははぁっとため息をつきつつ涼介を見つめた。 その視線を感じた涼介はチラリと視線を向け、拓海を見つめ返す。

「……………声は抑えろよ?」
「……………!!!!」
「ふーん………じゃあ聞かせちまおうかなぁ」

くすっと笑いながら啓介が舌なめずりすると拓海はその不届き者の頭をべしっと殴り、啓介の体を突き放して立ち上がる。

「ってぇ………」
「俺……………帰ります」

まるで新婚の奥様が夫婦喧嘩して「実家に帰らせていただきます」状態で拓海は一言冷たく言い放ち、部屋の端に置いてあった荷物を掴むとさっさとドアを開けて出て行く。
そんな拓海の後を追って「まてよー、拓海ーっ」と酔いで足をもつれさせつつあたふたと出て行く啓介の姿に、涼介は一言「情けねぇな……」と呟いて再び目を閉じた。




「拓海ぃ、悪かったって!だから帰らないでお願いだから!!なっ、この通り!!」
「うるさいっ、離してくださいよっ」
「ヤダ、離したら帰っちまうんだろ?」
「当たり前ですっ!」

薄暗い玄関でギャーギャー痴話喧嘩を繰り広げている二人だったが、啓介が拓海の顔を両の手で包み込み唇を食んだ途端にそれは終焉を迎えた。


拓海とて、本当はこうして啓介の家に泊まれるのが密かに嬉しかったのだ。


だから、拓海の唇を啓介の舌がちろっと舐め、形をなぞり、隙間を狙って差し込めば拓海の体はあっけなくふっ……とおとなしくなってしまう。少しの間、軽く舌を絡ませれば拓海の体からは力が抜けて啓介の体にくたっと寄りかかった。

はぁ、と熱くなった息を吐き、啓介を見上げれば啓介も欲の浮かびだした目で拓海を見つめ、小さく笑みを浮かべている。その視線に拓海の体の奥で何かが小さくパチッと弾けた。

「な………部屋、連れてってよ……もぉ、俺フラフラ……」
「…………よく言いますね、こんなキスしといて………」

啓介は拓海にぐたっと体重を預けながらそう楽しそうに呟くと文句を言いながらも拓海は寄りかかってきた啓介の体を抱え、階段へと向かって歩き出す。
何段か上がっては拓海の唇にキスし、拓海も戸惑いながらもそれに答えているうちに二人の纏う空気は、一番上につく頃にはもう甘く濃密なものになっていた。


ドアを開けて拓海を先に中に押し込みながら、どんな風にして拓海を啼かせてやろうかと密かに考えて啓介は口端をくっ、と持ち上げていた。









部屋に入った途端に腰が抜けそうなキスをされて。
気がつけばベッドの上、服は全部剥ぎ取られて床に散らばり。
下で寝ているメンバーに声を聞かれぬようにシーツに顔を押しつけながら。




拓海は獣の様に後ろから啓介に貫かれていた。




「ひ、ぅ………んっ、け……すけさぁ――――っ…」

甘い声をあげる拓海に啓介が覆いかぶさると、中のペニスの角度が変わったのか拓海の顎がぐっと上に反り返る。

「ン、アァ――――っ!」
「ココ………イイんだ……?」
「ゃっ、や…………、そ、なする、な…………っ…」

声の上がった箇所をしつこく穿ち続けられて、拓海はもう抗議もできずに喘ぐばかりだった。上半身はベッドに倒れ、白く艶めかしい腰だけを高々とあげる拓海の姿は啓介の中の獣をさらに刺激する。震える双丘を鷲掴みにして自身の抜き差しを激しくすると、拓海の顔と声はシーツに埋もれてしまった。

「ア、は………っ、も……ィッ――――
「俺、もっ……たく、み………っ!!」

啓介は拓海の内部に、拓海はシーツに、ほぼ同時に熱を放って果てた。
肩で大きく息をする拓海の背中に口づけを落としながら啓介が「大丈夫か」と尋ねると、拓海はゆるゆると頭を振って肩越しに啓介を睨む。

「酔っ払い、なのに………激し、すぎ………っ…」
「その酔っ払いに啼かされてんのは拓海だろ…………?」

余裕のある顔でそう囁かれると、拓海の体は僅かにピクンと揺れる。それに気づきながらも啓介はわざと拓海の内部からゆっくりと出ていきだした。その、中から熱い塊がなくなっていく感覚に拓海は「あぁ……」と声を漏らして体を振るわせる。
無意識に内部をキュッと締めつけるのに、気を良くした啓介はペロッと自分の唇を舐めた。

「……やぁらしー、拓海のココ……俺ン事、離したくないって締めつけまくり」

ぐちゅり、と濡れた音をたてて出ていった啓介のペニスが名残惜しいのか拓海の秘孔がヒクつくのを見て、啓介はまたニヤリと笑った。
支えがなくなってドサっとベッドに横に寝転がった拓海の後ろから啓介がきつく抱きしめる。


SHOOTING STAR2


「も………っ、寝かせてくださ…よ………」
「冗談言うなよ………まだまだこれからだろ……?」
「や、ですよ……も――――ぁ、ンっ、」

横向きに抱きかかえたまま、拓海の白く艶めかしい足を持ち上げて啓介は目の前の首筋を伝う汗を舐める。
その度に拓海の体は快感を求めるかのようにヒクつくから、啓介はさらにその白い首筋にかるく噛みつく。


拓海はその噛まれた感覚にあ、と小さく声を漏らして体を震わせた。


二人が恋人として付き合いだして、もうすでに何度も体を重ねているのに拓海の体はその度にどこか恥じらいを含んでは戦慄く。
今まで付き合ってきた女達と違うその拓海に、啓介は新鮮に思いながらも夢中で貪り続けた。


今だって啓介のペニスは再び熱を持って勃ちあがり、拓海の双丘に押しつけられては中に挿りたがっていた。拓海のソコは、啓介の放った白濁に濡れそぼりいつだって受け入れる準備は出来ている。

「い、加減……誰か、来た、ら…………ァ、」
「来やしねぇよ………皆、ぐっすり夢ン中だ」

クチュクチュと濡れた音を立てて拓海の秘孔を軽く突きながら啓介が囁くと、拓海は肩越しに啓介を見つめる。

(その目が………やたらとソソるってこと、)

自分じゃ気がついてねぇからタチ悪い……と啓介は内心軽くぼやきながらも、ずず………っとさらにペニスを押し込む。

「ぁ、ンンっ………け、すけさ………っ…」

再び内部に侵入してくる質量に、拓海は頭を仰け反らせて啓介の頭を後ろ手で引き寄せた。
あふあふと呼吸を繰り返しながら差し出される赤い舌に、啓介は誘われるように吸いつく。

「ン、………、」
「たく、み………ふ……」

いつの間にか腹につきそうなくらいにまで勃ち上がった拓海のペニスをちらりと見下ろし、啓介は舌に吸いついたままグンっ、と腰を強く突き上げた。

「ンン――――――っ?!」

突然の動きに、拓海がその大きい瞳をさらに見開く。抱えた足を更に高く持ち上げたまま、啓介は横向きで拓海の熱い内部を掻き混ぜだした。


拓海が苦しげに顔を背けようとするのを許さず啓介は貪り続ける。




まだまだ欲しい。

こんなに噛みついて貪って骨の髄までしゃぶりつくそうとしても。

拓海の全ては甘い香りを放つ花に似てて、自分に絡まり捕えたまま離そうとしない。




ため息に濡れるその唇も。

触って欲しいと言わんばかりに尖る胸の突起も。

首筋から鎖骨の窪みへと伝い落ちるその汗も。




全て全て自分だけのものにしてしまいたいから。






「……………もっと、そばに来いよ――――ッ…」






熱の篭った声で啓介はそう唸った。









何もかも解き放って目を閉じた瞬間、チカチカと光っては消えていくそれは。




まるで流れ星のようだと、拓海は薄れゆく意識の中でぼんやりとそう思っていた。











「あ、おはようございます、啓介さん!」

啓介が寝癖のついた髪を掻きながらリビングに入っていくと、ケンタが目を輝かせて挨拶する。すでに目を覚ましていたメンバーが散らかっていた酒のビンやらつまみの残りを片づけていた。

「うーす………うっわ、くっせーなこの部屋」
「すみません………思いきり汚してしまって…」

FDのメカニックが少し二日酔い気味の顔で申し訳なさそうに啓介に頭を下げると、啓介はいいって事よ、と笑いながら手を振った。

「あれ?アニキは?」
「あぁ、涼介ならキッチンで洗い物しているぞ。俺らで洗うと言ったんだがいいからと言われてしまってな」

啓介と同じように少し寝癖のついた髪のままそう言った史浩に、サンキュと返して啓介はキッチンへと向かった。

いつの間にか着替えたのか、昨夜とは違うシャツを着て洗い物をしている涼介の背中に声をかけると、手を止めずに振り返った。

「…………ずいぶんと遅いお目覚めだな」
「悪ィ、寝たの明け方だったし………ふ、わぁ……」

大きな欠伸をしながら冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出した啓介にちらっと視線を投げて、涼介は洗い終わったグラスを食器乾燥機へと入れていった。
その視線に気づきながらも啓介は知らん顔して一気に水を煽る。

「はぁ……………これ持っていっていいよな?もう少し寝るわ、俺」

一リットルのペットボトルの半分近くを飲み干してキャップを締めた啓介は、涼介にそう告げるとキッチンから出て行こうとした。

「…………啓介」
「んあ?何?」
「……………声は抑えろと言ったはずだが」

濡れた手を拭きながら涼介がそうチクリと突いても、啓介はフフンとそれを鼻でかわした。


SHOOTING STAR3


「しょーがねぇじゃん……アイツがねだるんだもん」

拓海が聞いてたら絶対に怒りそうなセリフをさらっと言って出て行った啓介の後姿に、涼介はやれやれ………と言わんばかりなため息をつくしかなかった。
そして、手伝ってくれているメンバーへの言い訳を考えながら、この借りはいつ返してもらおうかと涼介は頭の中で考え始めていたのだった。





inserted by FC2 system