Calling   Of   You






3.







※ご注意

ここから先、縛ったり目隠しといった表現があります。
そんなに酷い事はしていませんが、苦手な方はご注意ください;;












「……………」

啓介は、自分のベッドにくったりと横向きで寝転がってる拓海を感情のない瞳で見下ろしていた。

その拓海はすでに一糸纏わぬ姿になり、さらには胸の前で両手首をネクタイで縛られている。そんな格好にされてもまったく目を覚ます様子がないのは、啓介が拓海に出したカフェオレに微量の睡眠薬が含まれていたからだった。
微量でもすぐに眠りにつける拓海は案の定、10分としないうちに深い眠りの底に落ちていった。

啓介はベッドに横たわる拓海のしなやかな裸体に、すでに体が熱を帯び始めているのを感じていた。
同時に自分でもバカなことをしている……と、どこか冷静な頭で考えている。

―――拓海が浮気なんかするはずはない。

もちろん、ちゃんと信じていた。
だけども今の啓介にはその思いすら、どす黒い嫉妬の渦に色塗られてしまっていた。
拓海だって男であり、それなりにモテるということを改めて目の当たりにしてどこかネジがぶっ飛んでしまったようだった。



コイツは俺のモンだ―――――



そう小さく呟くと、啓介は拓海にのしかかり、縛られている手首を拓海の頭上へと動かしてゆっくり唇を重ねだした。

「ン………………」

何度も唇を舌で濡らし、僅かに開いた隙間から舌を差し入れて顎を掬い上げるように歯列を舐めると、拓海が鼻がかった声を漏らす。そんなに多量には入れていなかったから、そろそろ覚醒しだす頃だろうと、啓介は口づけながら目を細める。

「ぁ………………」

息苦しくなってきたのか、拓海が眉を寄せて無意識に歯を開くと、しめたとばかりに啓介は舌を差し入れ、まだ満足に動かない拓海の舌に絡めだした。やがて拓海の舌がぴくっと反応し、僅かに動き出すと啓介はさらに煽っていく。

「ン、ン……………」
「た…くみ………んぅ………」

ピチャピチャと濡れた音が響き、拓海の体がもぞもぞ捩ろうと動く。ようやく唇を離した啓介が見下ろしていると、意識が覚醒しだした拓海がぼんやりと目を開けた。

「ん………………」
「…………………」
「…………けぇすけ、さ……?」

名前を呼び、ごそっと動こうとして拓海は自分がされている格好に気がつく。服が脱がされてさらに手首まで縛られているのを見て、目を見開いた。

「なっ、なんですかこれ…………啓介さんッ!?」
「何って………これからイイ事、するんじゃん」
「ちょっ、何ふざけた真似…………っ…これ外してくださいよ!」

ギリっと啓介を睨みつける拓海の視線をものともせずに、啓介は口端をクッとあげるともう一度唇を重ねた。

「ンッ、んうぅ………………」

ねっしりと絡みつく舌の動きに翻弄されそうなりつつ、拓海は必死に唇から逃れようと顔を動かすが、片手で髪を掴まれ固定されてては逃げられようがなかった。
そして貪った唇がそのまま首筋から鎖骨へ滑り出した瞬間、拓海の体がビクンと大きく跳ねた。

「ッ…………………」
「感じちゃった………?」
「ち、ちがっ…………」

否定する拓海の足が、啓介の腹を蹴ろうとした瞬間に啓介が剥きだしになってる拓海自身をキュッと掴んだ。

「あっ――――――!!」
「ンな暴れんなって…………キモチよくしてやるから」

シュッシュッと拓海自身を擦りながら耳元で囁くと、拓海は「やだ、やめろよ!」と繰り返しながら何とか逃れようと身を捩る。
そのうちに少しずつ拓海自身がヌルヌルと濡れだし、啓介はニヤリと唇を歪ませた。拓海は啓介と視線を合わせないようにしながら、漏れそうになる声を唇を噛む事で懸命に堪えていた。

「噛むなよ………切れちまうっての」
「だ、たら…っ、ぅ、やめろよ―――っ!」
「…………やだね」
「けぇっ、すけさん…っ!」

拓海の非難も右から左へと流し、啓介はぷくりと赤く勃ち上がった小さな突起を口に含む。舌先で転がし歯を立てると拓海の唇から「ン、ぁ……………っ」と堪えきれない声が漏れる。両の突起を交互に甘く愛撫をしてやれば、拓海の白い肌がうっすらと淡いピンクに染まっていく。
その合間に啓介の手は拓海自身の括れを擦り、根元から幹を何度も行き来して育てていく。
啓介の愛撫に何とか抗おうとするものの、拓海の体がイイと感じる部分を的確に攻めてくる啓介に、拓海は次第に溺れつつあった。
それでもまだ心までは堕ちていないのか、快感に瞳を潤ませつつも時折啓介をぎりと睨みつける。

そんな拓海の瞳に自分の醜い嫉妬が見透かされている感じが耐えられず、啓介はふと体を起こすと立ち上がる。ふいに啓介が自分から退いたのに気づいた拓海は何とか力の入らない体を起こそうとひっくり返るが、案の定すぐに戻ってきた啓介に再び圧し掛かられてしまう。

「…………こんなカッコで逃げるつもりかよ」

言葉はひんやりと冷たいものの、表情はどこか苦しげな啓介の様子に拓海はそれでもまだ睨んでいる。しかし、その視界は啓介が手にしていた布で塞がれてしまった。

「…………これ以上見んじゃねぇよ」


―――――嫉妬にまみれた己の醜い表情など。


口には出さずに胸のうちでそう呟くと、尚も暴れる拓海の顔から後頭部に二重に布を巻き、苦しくない程度に結んだ。拓海は何度も頭を振って取ろうとするが、手が不自由なのでそれくらいでは簡単には取れない。

「けぇすけさんっ!!何使ってんだよ!これ―――――、」



――――アンタがくれたマフラーじゃないか!



非難と悲痛な色のこもった拓海の言葉に、啓介の手が一瞬止まる。
しかし顔を歪めつつも何も答えを返さないまま、啓介は再び拓海に愛撫を施し始めた。

「けぇすけ…さ……」

そんな啓介に拓海はショックを受けたように、急速に体から力が抜け始めていった。





「ッ、――――――、あぁっ!」

掠れ始めた声をあげ、拓海の背中が思いきり反る。結ばれた両手に顔を伏せ、高く持ち上げられた腰は啓介の大きい手ががっしりと掴んだままである。
どこで手に入れたのか、塗りこめられた潤滑剤には媚薬成分が入っているらしく、拓海自身は放っては愛撫されるたびに、拓海の意思とは別に勃ち上がるをさっきから何度も繰り返していた。今はもう抵抗すら諦めて、されるがままだった。
熱い楔が拓海の内部を蹂躙し、突き上げるに伴って拓海の体はゆらゆらと揺らされる。何度も放出されてぐちゅぐちゅと音をたてる中を行き来する啓介自身に貫かれて、赤く開ききった蕾からはしたなく白いものが押し出されていく。拓海は甘く、しかしどこか苦しげに小さくくぐもった声を漏らしていた。

啓介はそんな拓海の汗の浮かんだ背中を見下ろしつつ、先程まで燻っていた黒い感情が次第に引いていくのを感じ始めていた。




こんなはずじゃなかったのに。
もっともっと、じっくりと二人だけの甘い時間を過ごしたかったのに。


どこで間違えてしまったのだろうか―――




後から後から後悔が波のように押し寄せては、啓介を苦しい思いで一杯にしていく。



それでも体は快楽には抗えない。
殆ど本能のまま、腰を動かして自分と拓海を快楽の崖っぷちへと追い込んでいく。やがて拓海も限界が近いのか、内部が収縮し始めて啓介の昂りを煽った。

「たく…っ、み………!!」
―――――――っ!!」

ほぼ同時に熱を迸らせて、二人は果てた。ハァハァと荒い呼吸をしながら啓介が拓海の中から出て行くと、力の抜けた体がドサッとベッドに横たわる。たった今啓介の欲望を受け入れていた所からは、どろりと白濁が伝い落ちていた。
啓介の震える手が拓海の手首のネクタイを解いていく。
そんなにきつく締めたつもりではなかったが、それでも両の手首にはくっきりと締め痕が残ってしまった。その痕にまた後悔の念を募らせながら、今度は拓海の顔を覆っていたマフラーを解き始めた。


このマフラーは拓海がしていたもので。啓介が昨年のクリスマスの時に拓海にプレゼントした物だった。


恥ずかしそうに、でも嬉しそうに「ありがとうございます…」と頭を下げて拓海が受け取ったそのマフラーは、今は無残にも拓海の視界を覆ってぐちゃぐちゃになってしまっている。
ゆるゆると解けていくその下にある拓海の表情を見た途端、啓介は自分がしでかしてしまった事の重大さをまざまざと見せつけられてしまったのだった。




その瞳は何も映してしなかった。




ただ透明なガラス玉のような瞳から幾筋もの涙を伝わらせた跡だけが、拓海の虚しい思いを訴えていた。






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